フルマラソンに対応するためのトレーニングは、長い距離を走るだけではなく、スピードを上げるために短い距離のダッシュを繰り返します。
これはインターバルトレーニングと呼ばれているものです。
よくやるのは400mという短距離です(陸上では400mは短距離扱いです)。
練習会ではある程度長い距離を走った後に、このようなインターバルトレーニングをする時もあります。
スピードとスタミナ、同時に鍛える負荷の高い練習です。
このような短距離と長距離をミックスした練習はかなり疲れます。
僕は短距離と長距離では使う筋肉は同じでも、走る時の使われ方や使い方が違うので疲労が溜まるのではないかと考えています。
実際のところはどうなのか。
「筋トレのための人体解剖図」という本を参考にしながら、見ていきたいと思います。
短距離の筋肉の使われ方
着地する時は、大腿四頭筋、ハムストリングス、前脛骨筋、下腿三頭筋などが協力して関節を支え、着地の衝撃を吸収する。大殿筋によって股関節を伸展し、最後に大殿筋、大腿四頭筋、下腿三頭筋などによって地面を後方へ強くける。体幹は腹筋群によってやや前傾に保つ。
後方に蹴り上げた下肢は、腸腰筋(大腰筋、腸骨筋)や大腿四頭筋の大腿直近が前方に引き寄せる。自然に屈曲した膝を大腿四頭筋によって伸展し、前方に振り出す。
※筋トレのための人体解剖図より抜粋
一つ一つ見ていきます。
大腿四頭筋とは「大腿直筋(だいたいちょくきん)、内側広筋、外側広筋、中間広筋」の4つの筋肉からなる筋肉群なのですが、ここは「太ももの前側の筋肉群」と理解しておけば大丈夫です。
同じようにハムストリングは「大腿二頭筋、半膜洋筋、半腱洋筋」の3つの筋肉群のことですが、「太ももの後ろ側にある筋肉群」と覚えておけば問題ないでしょう。
前脛骨筋はスネの前の筋肉、下腿三頭筋は「腓腹筋とヒラメ筋」を合わせた筋肉群でふくらはぎの筋肉のことを指します。
今紹介した筋肉が着地の衝撃を受け止めているということになります。
そして大殿筋はお尻の筋肉のこと。
お尻の筋肉を使って股関節を曲げたり伸ばしたりし、太ももの前側の筋肉とふくらはぎ筋肉を使って、後方に強く蹴るという動作をし、体幹は腹筋で支えます。
そして腸腰筋とありますが、これは背骨と骨盤をつないでいる筋肉群。
蹴り上げた下肢(足)はこの腸腰筋と太ももの前側の筋肉を使って前に押し出していきます。
そして上半身は上腕二頭筋と上腕三頭筋という腕の筋肉によって肘を曲げた状態を維持します。
そして肩周りの筋肉である三角筋、胸の筋肉である大胸筋、首から背中にかけて広がっている僧帽筋、背中の筋肉である広背筋を使ってカラダをひねることで上半身の力を下半身に伝えていきます。
これらの動きを常に最大出力で行うのが「短距離」です。
長距離の筋肉の使われ方
前方で着地した下肢で体重を支えるために下肢全体の筋がはたらく。続けて大殿筋、大腿四頭筋、下腿三頭筋などがはたらいて後方に蹴りだす。その下肢を前方に振り出すには、腸腰筋(大腰筋、腸骨筋)と腹直筋、大腿四頭筋がはたらき、前方で着地する時は前脛骨筋が爪先を持ち上げる。
上肢は、上腕二頭筋によって肘を屈曲位に維持した状態で、三角筋、大胸筋、僧帽筋、広背筋のはたらきや体幹の回旋により、からだの両側でリズミカルに振る。
※筋トレのための人体解剖図より抜粋
こちらも詳しく見ていきましょう。
下肢(足)を動かす動作に関しては短距離とほぼ一緒。
違うのは「爪先を持ち上げる」という動きが入るということ。
短距離は基本的に爪先で着地しますが、長距離は足の裏全体で着地したりカカトから着地したりします。
最後地面を蹴る時に爪先で地面を踏んでいる状態にしておかないと地面から足が離れる行為がスムーズにできなくなるのです。
そして上肢(上半身)の動きは短距離と同じですが、「リズミカルに振る」というところが違ってきます。
短距離は短い時間に自分の最大出力で動かし続けますが、長距離は長時間カラダを動かし続ける必要があります。
常に全力というより「できるだけ力を使わずリズムでカラダを動かす」ということになります。
メトロノームのように何があっても一定のリズムを刻み続けるというのが「長距離」のカラダの動かし方です。
そして「筋肉」もできる限り省エネルギーで動かす必要があります。
最後に
「走る」という行為で使う筋肉はほぼ同じですが、使い方が違ってきます。
短距離は最大出力で筋肉を動かし続ける。
長距離はリズムよく省エネで長時間筋肉を動かし続ける。
長距離のレースには、特にタイムを狙って長距離を走る時は、「ラストスパート」という短距離の要素が最後の最後、一番ツライところで必要になってきます。
それだけではありません。
自分にとっては短距離走のスピードでレースが進むかもしれないんです。
そのような理由で、長距離選手は短距離もトレーニングの中に入れて「スピード」も強化しなければならないのです。
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