The Olympic dream is a special dream. For every athlete here it has taken a lifetime of preparation to get to this point. Today I lived my Olympic dream. I always say that sport is like life, whereby you can win and lose. But today was a day where I won. pic.twitter.com/vDzYKcH8Yg
— Eliud Kipchoge – EGH🇰🇪 (@EliudKipchoge) August 8, 2021
このレースを見ていた方であれば、レース中の余裕度や安定感、安心感は見て撮れたと思います。
北海道とはいえ、暑く厳しい気候のなかで行われたレースでも平然と走り切ったキプチョゲ選手ですが、その強さの秘密はなんなのでしょうか。
そこで、キプチョゲ選手の強さに関する記事(参考:PODIUMRUNNER)を見ながら、彼の本質に迫ってみたいと思います。
トレーニング量に関して
オリンピックに出るような選手は一ヶ月に900〜1,000km前後の距離をトレーニングで走ると思います。
男子マラソンの大迫選手も直前の追い込みトレーニングでは一週間で150マイル(240km)走ったとインスタグラムにアップしていました。
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キプチョゲ選手も他の選手と同じくらいのトレーニング量をこなしていると思います。
ただし、80%程度の負荷でとどめ余力を残してトレーンングを終えるとしています。
決して毎回オールアウトするようなトレーニングはしていないことになります。
これはレースが最も重要であり、全力を出すのはレースでトレーニングの時ではないとしています。
「トレーニングは余力を持ってこなす」というのが重要ということなのでしょう。
追い込みすぎないことで故障防止、早期疲労回復をしトレーニング計画を中断させないようにしていると思われます。
キプチョゲのVO2MAX、LT値、ランニングエコノミー
マラソントレーニングをする時、長い距離を走るトレーニングだけでは走力の向上は見込めません。 マラソンのトレーニングをする上で、ランニングのパフォーマンスを決める要素がなんなのかを理解しておく必要があります。 ラン[…]
マラソントレーニングをする時、長い距離を走るトレーニングだけでは走力の向上は見込めません。 マラソンのトレーニングをする上で、ランニングのパフォーマンスを決める要素がなんなのかを理解しておく必要があります。 […]
マラソントレーニングをする時、長い距離を走るトレーニングだけでは走力の向上は見込めません。 マラソンのトレーニングをする上で、ランニングのパフォーマンスを決める要素がなんなのかを理解しておく必要があります。 ランニングの[…]
1991年、マラソンの世界記録が2時間6分50秒に達した時、マイケル・ジョイナーという専門家が論文を発表しています。
そこには「1時間57分58秒でフルマラソンを走り切ることが可能」と書いてあったと参考にしたPODIUMRUNNERの記事には書かれています。
この時点でフルマラソン2時間切りができると言えたことはすごいのですが、非公認とはいえ「Breaking 2」というイベントでキプチョゲ選手本人が2時間を切っているのでこの説は証明されたことになります。
ではなぜ2時間を切って走ることができると言えたのでしょうか。
ジョイナー氏は、かつてマラソン選手のLT値ペースを約85%に固定していました。
しかし約90%の可能性が高いとしたのです。
そしてその後それを証明してくれる選手が現れたというわけです。
キプチョゲ選手の数値がどれくらいなのかは公表されていないのでわかりません。
ただ、現役最強である以上、ランニングパフォーマンスを決める3つの要素は現役ランナーの中でも最高クラスということになると思います。
キプチョゲ選手はまだ30代。
市民ランナーであっても、この3つの数値が上がってくれば早く走れることができるということにもつながります。
筋肉の疲労抵抗性
今回の東京2020男子マラソンのレースでは、キプチョゲ選手だけが全く疲れを感じていないようにも見えました。
レース中もそうですが、ゴール後も一人だけピンピンしていたように見受けられました。
先に紹介したジョイナー氏は、
「長距離ランナーは筋肉を披露させることなく数時間繰り返し働き続けることができるよう訓練することができる」
と論文に書いています。
そうすると、キプチョゲ選手はマラソンレースの過程で他のランナーより筋肉の状態が悪化しないということになるでしょう。
脚の硬さ
エリートランナーはより「硬い脚」で走っていることがわかっているそうです。
ここでいう「硬い脚を持つランナー」とは一歩一歩の衝撃でカラダあまり圧縮されず、路面からの反発を得やすいランナーのことを指します。
跳ねるような走り方は、硬い路面から反発を得られやすい走りとは腱や靭帯の弾力性に加え、全身の筋肉との調和によって生まれるものとしています。
ケニア人ははじめとする黒人ランナーはこのような動きができることもあって、その走り方はシンプルで効率的な跳躍システムに近いものであると記事には書かれています。
ただ、キプチョゲ選手のフォームを見ると、「跳ねている」とは見えません。
跳ねる力が強ければ上下運動が出てもいいのですが、キプチョゲ選手のフォームは頭・腰の位置が終始変わらない位置にありました。
そのため地面からの反発力を得つつ、地面からの反発力に負けないようカラダで押さえつけ前への推進力に変えていると言えるでしょう。
さらに言えば一歩一歩のエネルギー損失も少ない(ブレーキがかかっていない)のでスピードを長時間維持できるのかもしれません。
最後に
このほかにも、キプチョゲ選手の強さの秘密として「カラダが小さいこと」「心が強いこと」が挙げられています。
日本には「心・技・体」が揃って一流選手になれるという考え方がありますが、キプチョゲ選手を見ているとあながち嘘ではないと思えます。
マラソンは長時間にわたって行われるスポーツです。
「体」を鍛えることだけに偏ってしまいがちですが、時にはフォームや精神的な鍛錬も必要ということを改めてわかったような気がします。